作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏のラジオでの発言を中心にまとめたブログです

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【佐藤優】自署『地政学から読み解く米中露の戦略』と北朝鮮を語る【くにまるジャパン極】

投稿日:2017年7月8日 更新日:

2017年7月7日放送の文化放送ラジオ『くにまるジャパン極』にて、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が『地政学から読み解く米中露の戦略』と、北朝鮮の外交戦略を語った。

(野村邦丸)佐藤優さん(著作)の別冊宝島『地政学から読み解く米中露の戦略』。これはアメリカ、中国、北朝鮮、ロシアとそれぞれの地政学からみた事情というのをお書きになっているですが。

地政学は、巨視的な地理の影響を考える

今回トランプさんが習近平さんに「とにかくを北朝鮮なんとかしてくれよ」とプレッシャーをかけている中で、この『地政学から読み解く地政学から読み解く米中露の戦略』56ページに「だから北朝鮮への対応はフラフラしている。中国には、北朝鮮核問題について何のビジョンもなかった」

(佐藤大) そうなんです。中国は北朝鮮問題をよく考えてないんですよ。

地政学と言うのはね、何のことだかよくわからない。地政学と普通の国際評論はどう違うんだと。

地政学と言うのは、地「政学」

(野村邦丸) 小さい(地)に「政学」

(佐藤優)だから、政治の話とそんなに変わらなくなっちゃう。「地政学」の話をしてる人も、その話は国際関係専門家の話とどう違うのかとなります。

地政学と言うのは今の国際政治では細かいことが多すぎて予測が難しい時に、ぐっと背後までさかのぼった制約要因を考えるんですね。

海洋国家は国際展開し、衝突する

ヘーゲルという19世紀のドイツの哲学者はこういうこと言ってるんです「山は人々を遠ざけ、海と川は人々を近づける。」

すなわち、海を持っている国と言うのは国際展開したがるんですよ。そのかわり全面的に土地を占領しようとはしない。港を抑えて経済的なネットワークを持っていけばいいということなんですね。

それで海の中心とした国と言うのは、実は同じく海を中心とした国と衝突するんです。日本も海洋国家です。アメリカも海洋国家ですから、アメリカと日本は本来ぶつかるんです。

だから仲良くしないといけない。日本はアメリカと仲良くしてるうちは大変なことにならなかったけれども、前の戦争でアメリカと正面切って喧嘩したら大変なことになった。

これはゲームのルールは同じだから磁石で言うとN極とN極になるんです。

(野村邦丸) はい

(佐藤優) 例えばねソ連時代は、日本とソ連は仲悪かったですよね。その割に、中国との関係は良かったですよね。一時期の北方領土交渉なんて中国が支持してくれたから。

それはソ連がミンスクと言うような航空母艦を使ってウラジオストクの奥とか、ペトロパブロフスク・カムチャツキー、カムチャッカトカ半島に潜水艦の基地を作るとか言うことをして(ソ連は)海洋帝国になろうとしたからなんです。

そうすると海洋国家である日本とぶつかっちゃうんです。

他方、中国は沿岸警備艇ぐらいしかなかったですから、その頃はね。

2018年、プーチン大統領再選後に北方領土返還へ

逆にソ連崩壊後、ロシアの力がなくなってきてペトロパブロスク・カムチャツキーでもかつてのように潜水艦の展開はないですね。ウラジオにも航空母艦なんてない。

そういう風な状態になってくると、ロシアとの緊張と言うのは下がってくるわけですよ

(野村邦丸) はい

(佐藤優) だから安倍さんもロシアには結構入れ込んでいて、来年の3月にプーチン大統領が再選された後は、おそらく1956年の日ソ共同宣言に基づいて歯舞群島色丹島の引き渡し、こういうことになる。その方向に向けて交渉が動くでしょうね。

それに対して、中国との関係悪くなってるでしょう。中国は航空母艦をデモンストレーションしたり、尖閣諸島の中に工船が入って通ろうしようとしてるからですよね。

こおいう構図なんですね。

(野村邦丸) なるほどね。

(佐藤優) だから、良くなるか・悪くなるかと言うのは海洋国家である日本の周辺に、海洋国が出てくると悪くなる。裏返すと海に出て来なければ中国との関係もすぐ良くなります。

中国は北朝鮮政策にビジョンがない

(野村邦丸) その辺のことも書いてあるんですが、その山の方ですよね。

中国と北朝鮮の国境ですよね。

アメリカからプレッシャーをかけられて、「中国は北朝鮮の石油のパイプラインを止めちゃえよ」と、いうようなこともトランプさん言ってると思うんですけど。

ただ中国は、北朝鮮は困った国だなと思っているだけでビジョンを持ってないと言う事は本当なんですか。

(佐藤大)その通りです。

完全な属国にする。そのために核の傘を貸し出して、そのかわり弾道ミサイル開発と核兵器の開発を辞めさせると言う。

そういう圧力を本気で加えればできるんですよ。でもそれやってないですよね

かといって、アメリカに対して「今、北朝鮮は中国が庇護してるんだから、お前らの制裁には協力できない」ともやってない。

だから中国の対北朝鮮政策と言うのは明確なものはないですね。

(野村邦丸) 今まで金正恩のお父さん金正日さん、そして国を作った金日成さん。その関係は非常によかったというのは、お互いに大人の関係で居られたということなんですかね。

(佐藤優) そういうことです。

アメリカの怖さを、あの世代までは知ってますからね。アメリカと戦争始めればほんとに国土がなくなる可能性がある、戦争経験があるわけですよ。

ところが今はお兄さん戦争経験ないですからね。だからやたら勇ましいですよね。

自民党の政治家でもそうでしょう。戦争経験があった世代っていうのは、戦争に対して非常に慎重ですよね今でもところが若い歳になると軽いでしょ。それと似てるんですよ。

 

北朝鮮の外交戦略は、ソ連と中国を天秤にかけること

(野村邦丸) この本の中でね「ソ連を信用していないから核開発を始めた」

(佐藤大) そういうことになるんです。

例えば意外と知られてないんだけれども、ロシアが共産主義時代にソ連共産党の書記長が1度も訪問してない国は北朝鮮だけなんですよ。後の社会主義国、中国もアルバニアも全部行っているんです。

それぐらい嫌いなんですよ。

(野村邦丸) なんで嫌いなんですか。

(佐藤優) それは、言うこと聞かないから

(野村邦丸) あー

(佐藤優〉 例えばブラーツク。これはバイカル湖のところに大きな発電所を作った。それだから(ソ連が)送電線作って電気供給するって言っても、(北朝鮮)はいらないと

(野村邦丸) それは、ソ連側から北朝鮮側に電気を送るといってもいらないと。

(佐藤優〉 それでこう言ってるわけです。

「本当に電気を貰わわなくてよかったろう、フレシチョフに言われたんだけれども。そんなもの作ったら、いつスイッチ切れるか分かんないから」

(野村邦丸) は〜。

(佐藤優) 「東欧を見てごらん、崩壊した。コメコンに入ってソ連と経済的な連携を深めた国は全部崩壊した。」

「ウチが生き残っているのはあの時、電線を引かなかったからだ」

だからそれぐらい信用していない。

(野村邦丸) へー。

(佐藤優) 常に北京とモスクワを天秤にかけて、ソ連と喧嘩をしてる時は中国から金をもらって、ソ連と喧嘩をしてる時は中国から金をもらう。そういう外交したわけ

ところがソ連崩壊後、ソ連からお金が出なくなっちゃったわけでしょ。だからお財布は中国しかないんですよ

(野村邦丸) 今中国との関係は悪化している

(佐藤大) 悪化している。

もう一つお金もらえるところないから。それだからどんどん混乱してるんですよ

それでソ連の場合はね、国境地帯を無人地帯にしてるんです。短い国境があるんだけど。だから絶対難民は流れてこないんですよ

ひどい話でね、戦前に日本のスパイになる可能性があると言って、ウラジオストクからハバロフスクまで朝鮮人たくさん住んでたんですよ。中央アジアの砂漠に強制移住。

(野村邦丸) えーそんなこと。

(佐藤優) それで未だに戻してない。

特に北朝鮮との国境地帯は沼地のまま、誰も住まないで道路と鉄道1本だけ通っている。こういう状態にしてるんですね。北朝鮮崩壊があってもウチには難民が来ないようにすると。全部中国側に行ってくれ、こういう話ですよ。

(野村邦丸) 例えば金日成さんが当時のソ連の核の傘に入る、あるいは中国の傘の下に入ると言う選択をしていればらまた別だったのかもしれない

(佐藤優) 別の可能性あります。

その場合おそらくはソ連の核の傘に入るでしょうから。というのは伝統としては中国の方が怖いですからね。歴史的にずっと中国の脅威。

それこそ高句麗の時代だったらあそこは朝鮮半島の国家なのかそれとも中国の東北部なのか論争がいまだにあるわけですからだからソ連の核の傘に入ると

そうすると東ヨーロッパと同じ運命で、おそらくは韓国と併合という形になってたでしょうね。

北朝鮮の欲しいものは、アメリカしか与えられない

(野村邦丸) 地政学的に北朝鮮サイドから見た場合っていうのは、自前の核爆弾を持ちたかった。

(佐藤大) 主体思想(チュチェ思想)と言うのは、どういうことかって言うとロシア・中国・日本・アメリカから主体性を持つと

ただし主体性と言うことを強調しないとならないほど、半島国家と言うのは厳しいんです。大陸国家の脅威があるでしょ、繋がっているんで。半島で半分が島だから海洋国家の脅威もある

だから半島は割れるんですバルカン半島そうでしょう。ベトナム半島・ギリシャも半島でしょ。半島は大変なの。

(野村邦丸) 大陸からのプレッシャーと、海からのプレッシャー。

(佐藤優) だから自分たちが海洋国家としての要素と大陸国家の要素の両方を出さなきゃなんないんですよ。

(野村邦丸) それは国力が強ければ何とかなるだろうけど、そんなに強くない場合はどこかで脅かされる心配っていうのはいつもある。

(佐藤大) その通りです。

それで韓国は、どちらかと言うと海洋国家的になってしまうんですよ。それは38度線で切られてますから。陸で繋がってると言うのは無いですから。

北朝鮮と言うのはハイブリットなんですね。陸と海両方持ってますから。

(野村邦丸) そういう意味ではハイブリットなんだけども、それゆえに悩みも多い

(佐藤優) 中国とロシアってそんなに対立してないですから。となるとどこからの自主性を担保するかと言うとアメリカのわけですよ。

北朝鮮なんてったって日本も中国も、北朝鮮の金正恩体勢を武力で倒そうと考えてないし、その実力もないでしょ。アメリカはあるから。アメリカから保証を取り付けなくいといけないわけですよね

日本ができないのは、日本の安倍政権が無能なわけででなければ、習近平が北朝鮮はよくわかってないわけでも、プーチンが少し利用するだけでずるいから動かないんじゃなくて、北朝鮮の欲しいものは与えられないからなんですよ。

だから交渉ができない。

トランプ大統領から北朝鮮への条件が分からない

アメリカが北朝鮮の生存を保障するということがあったら、何がアメリカとして条件を出せるかというのか今のところ見えてない。トランプっていうのは。

オバマの場合はっきりしてましたよ。朝鮮半島でもし核を作ってアメリカまで飛ぶようにしたら確実に潰すし、北朝鮮が核弾道ミサイルを持っているということで、中距離弾道ミサイルを認めて日本が攻撃されるのは構わないねというのは彼はしませんでしたよ。

ところがトランプに関する我々の不安と言うのは、激しいこと言うけど実際はやりかねない。

つまりパキスタン。パキスタンの核を認めてないんですよね。ところがパキスタンの弾道ミサイルは中距離弾道ミサイルだからアメリカ届かないんですよインドとイラン届くんだったらしょうがないな、良いんじゃないのと言う位でしょ。

それと同じことを北朝鮮との関係でやりかねないわけですよ。それが我々にとって1番怖いシナリオなんですよね。
〈書き起こしおわり〉

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